メビウス~無限∞回路
第1章 あいするということ。
秋風が冷たく肌をすりぬける。
「何を感じた?」
細面の切れ長の瞳で長身の青年が半歩前を歩いていた中学生にしか見えない少年に尋ねる。少年はくりくりとした瞳が印象に残りそうな標準的中学生に見えた。
ふたりはほぼ決まった距離を保ち歩いている。
「神楽と同じモノだよ」
少年は青年を神楽と呼んだ。本名は小野神楽。私大の二年で二十歳。風貌よりも実年齢は下になる。落ち着いた気配を持ち、どこか影を宿していた。
「尊。今日は偵察だけだから『気』を隠してくださいね」
心配そうに神楽が苦笑する。守部尊は足を止め、優美な鍛錬された動作で振り返る。その瞳は中学生が持つには鋭く、また険しかった。
「大きなお世話だ、神楽」
不機嫌な声に神楽は一歩を下がり、彼の元に膝をつく。
「私の役目は尊を守ることです」
尊はそのいつも出る一言に嘆息すると、何かを感じて正面に向き直った。
「偵察だけなんて言ってらんねぇって感じだな」
「そうですね…」
足を早めて歩く速度に風が変化する。続いて神楽の風も変化を遂げた。
風とは人間の体内から溢れる『生気』のこと。尊の風は紅く炎の彩を持っている。性格に沿った色だと尊自身も思っていた―――風。
風は必ずしもひとつの色ではない。その風を持つ人の個性に似合った色を持つのだ。素の色とも、原始の色とも言われる鮮やかな紅。
「どうやら時間はないようですね」
大通りを横目に脇からの細い道を更に進む。
「罠か!」
尊が振り返ると変質化した風が鋭い刃として、カマイタチが襲い掛かる。
「っ!」
咄嗟に顔に当たる衝撃を落とし、両腕で顔面を守ったが腕が細い針で傷つけられいく。
「げっ!」
腰を落として両腕で守りを広げるが、隙間から入ってくる針の鋭さは容易ではなく痛みを与えてくる。緋色の風に押され、一度消えたと思った風が今度は逆流してきた。
「何を感じた?」
細面の切れ長の瞳で長身の青年が半歩前を歩いていた中学生にしか見えない少年に尋ねる。少年はくりくりとした瞳が印象に残りそうな標準的中学生に見えた。
ふたりはほぼ決まった距離を保ち歩いている。
「神楽と同じモノだよ」
少年は青年を神楽と呼んだ。本名は小野神楽。私大の二年で二十歳。風貌よりも実年齢は下になる。落ち着いた気配を持ち、どこか影を宿していた。
「尊。今日は偵察だけだから『気』を隠してくださいね」
心配そうに神楽が苦笑する。守部尊は足を止め、優美な鍛錬された動作で振り返る。その瞳は中学生が持つには鋭く、また険しかった。
「大きなお世話だ、神楽」
不機嫌な声に神楽は一歩を下がり、彼の元に膝をつく。
「私の役目は尊を守ることです」
尊はそのいつも出る一言に嘆息すると、何かを感じて正面に向き直った。
「偵察だけなんて言ってらんねぇって感じだな」
「そうですね…」
足を早めて歩く速度に風が変化する。続いて神楽の風も変化を遂げた。
風とは人間の体内から溢れる『生気』のこと。尊の風は紅く炎の彩を持っている。性格に沿った色だと尊自身も思っていた―――風。
風は必ずしもひとつの色ではない。その風を持つ人の個性に似合った色を持つのだ。素の色とも、原始の色とも言われる鮮やかな紅。
「どうやら時間はないようですね」
大通りを横目に脇からの細い道を更に進む。
「罠か!」
尊が振り返ると変質化した風が鋭い刃として、カマイタチが襲い掛かる。
「っ!」
咄嗟に顔に当たる衝撃を落とし、両腕で顔面を守ったが腕が細い針で傷つけられいく。
「げっ!」
腰を落として両腕で守りを広げるが、隙間から入ってくる針の鋭さは容易ではなく痛みを与えてくる。緋色の風に押され、一度消えたと思った風が今度は逆流してきた。