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メビウス~無限∞回路

第9章 鳴き声(後編)


「ああ…神子に名前聞くの忘れてたな」
「調べてやろうか?」
「遠慮する、霊を幾つも渡すことになりそうだ」
「それはもちろん…」
「要らん、余計な真似せずとも……また会えるだろう」

うっすらと笑うと同時に、男の最期の断末魔が溢れる。それに合わせて仔猫の中から瘴気と呼ぶに相応しい悪感情の塊が、口から出てくるのを勇魚は指先で摘んで口に放り込んだ。ゆっくりと咀嚼すると仔猫は小さな鳴き声をあげ、勇魚の頬に鼻先を寄せて甘えるとそのまま姿を消した。

「還ったか…」
「ああ、還した」






雷光の道に辿って、子供と同じ場所に送ることは容易いことだった。
黄泉ではなく夜見へと誘い、今暫くはその御霊を休めるがいい。…勇魚が呟き、天上も分からない上を見上げて小さく笑った。













おしまい
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