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メビウス~無限∞回路

第1章 あいするということ。

 当たると覚悟した尊に風は来ない。………目を開くと神楽が片手で風を制していた。一見して風と風がぶつかりあい霧散していく姿があった。

「だから言ったでしょう。安易に『気』を漏らして、自分の居場所を教えるなんてあんた馬鹿でしょう」

 尊のバツが悪そうな顔に怒気が浮かぶ。激しい炎の嵐を纏い顔を上げた。

「あとでボコにしてやる………」
「え、聞こえませんよ。それより早くして下さいな」
「抑えてろ、タコ男」

 片手に風が膨大に圧縮と収縮を繰り返し膨らんでいく。まるで本当に炎のようになっていく紅い風を迸らせた。

「俺を傷つけた罪は万事、死罪に当たる! 地獄へ行って反省しやがれッ!」

 体内に隠していた気を更に集中で高めていく。

「怨霊退散! 静寂昇天! あの世に塵と還れ!!」

 凝縮圧縮された『気』の剣。彼はこれを陽炎気と呼んでいる。サーベルのように尖った切っ先で黒い陰を真っ二つに引き裂いた。
 音もなく塵よりも小さな微粒子となり、先から彼の紅い炎に燃えて消えていった。
 全身の力を放つ気を自分に戻るように念じる。それだけで膨大に圧縮されていた炎の気剣は大気に、というよりも尊本人に気化した。
 思ったよりも戻る気が少なくて、そのまま地面にへたり込む。

「…大丈夫ですか?」
「まぁな、あれくら……どってことはない」
「あ、じゃ還元しなくていいですね」

 にっこりと笑い離れる万物の気を与える神楽が離れようとすると、歩く力さえ失った尊は腰にダイレクトアタックで捕まえる。

「お前の仕事しろよ」
「いや、だって大丈夫だっていうならいいかなぁ~っと」

 にこにこと分かって言っているこの男の本性はサドだと尊は思っている。しかしこの眉目秀麗な男に世間は騙されているのが痛い。ってか、将来こいつニュースにでるぞ!と内心では思いつつ、この現状ではあとどう考えても三時間は歩けない。―――縋るしかないのか。

「分かった!いんねぇよ!お前の力なんて!!」

 ギッと睨んで立ち上がろうとして砕ける腰を、神楽は咄嗟に支えて笑みを浮かべた。

「尊の馬鹿なとこが大好きだよ」
「馬鹿とはなんだ!馬鹿とはっ!!俺はお前よりも年上なんだぞ!」

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