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メビウス~無限∞回路

第6章 祭り

 神社の境内も賑わう。夏の祭は色とりどりの蝶も舞うように、鮮やかな浴衣姿の少女たちがグループで行動しているを、何気ない視線で見送る。

「退屈ですか?」
「ああ」

 キッパリと言い切る尊は手持ち無沙汰らしく、しゃがんで携帯をいじってた。

「暇なら手伝って欲しいのですが…」

 控えめに言う神楽は、この見た目年下にしか見えないくせに、実はかなり年上の尊の扱いに困ってしまう。たしかに祭行事に関係あるのは、神楽の父だが。生家の手伝いをするのも、孝行のひとつと叩きこまれていた神楽には逃げ場がない。

「じゃ、俺は邪魔にならねーように、祭に混じってくるぜ」

 尊は言うが早いか、すでに携帯をポッケになおし靴を履いてる。こういう時の行動の早さは、慣れてるとはいえ苦笑してしまう。
 確かに彼には、手伝う義理もないのだが―――考えを逡巡してる間に、尊は既に外に飛び出していた。

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