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メビウス~無限∞回路

第7章 鳴き声(前編

どんな家庭で生まれるにしても、それは数奇な縁が築くものである。勇魚の仕事は今から始まる。両手を重ね、言葉の素を崩した『咒』を唱える。闇が室内へと入り電気系統に侵食した。
黄泉の世界に近い電気系統は、操るのは簡単だ。咒に理を重ねると黄泉と世界がぶれを引きあい、ゆっくりとリンクしていく。勇魚は人差し指と小指を少し曲げ、吐息をふっと投げた。
それは真っ直ぐに子供の額を貫き、その場でパタリと倒れ込んだ。ーーそれを合図に、室内蛍光灯が点滅を繰り返し始める。壁に取り付けられている時刻はきっかり2時を指していた。
御誂え向きのであると同時に闇が一番深くなる時刻でもある。突然のことに二人に言葉はない。おそらく平静というよりも鈍い類いであろうと予想する。こういう人種であるほどに、超非科学的な事項とは無縁なパターンは多い。勇魚も熟知しているので、これから始まるショーに軽く胸がときめいた。

「どういった狂気を引いてくれるのかなぁ……」

一方、穢れが大半を占める室内でゆっくりと蠢く影ーーひとつ。
勇魚が送ったイソギンチャクに似た、名を華瘴。勇魚の直属の部下でもある。泥水が水道から勢いよく流れ出す。それに男は訝しげに眉間をしかめ、女を見るが女は気にする素振りもなく、酒瓶を片手に鼾を高々にあげていた。

「カショウ…の泥水は浴びると全身が、少しづつほんの少しづつ削られていくんだ。…肉体は腐食をしていきながら、精神をも喰むからきっと美味しく出来ると思います」

瞳を軽く伏せて黄泉の王を思い薄く笑みを履く。














後編へ続く(次はお祓い組出るよ!安定のシリアル目指すよ!)

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