妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
余韻も去らない内にまた享楽が始まり、嘉明は喜びと快楽に甘い叫びを上げる。
「――っ!」
そこで嘉明は体の自由を取り戻し、飛び起きる。しかし自らに覆い被さる八代の姿はなく、嘉明は見慣れた自分の寝所に横たわっていた。
(……夢、か。淫夢を見たのは、久々だな)
団右衛門が現れてから、潜んでいた悪夢。嘉明は鳥肌が立ち寒気のする体を抱くと、長い溜め息を吐いた。
(恐ろしい……子を孕むだと? 冗談じゃない、私は男だぞ)
そんな事は不可能だと忘れてしまいたいが、鬼の力があれば可能性がないとは言い切れない。事実団右衛門は、鬼の全てを嘉明に教えてはいないのだ。どちらにせよ、鬼の求めるものが段々過剰になっているのは確かだった。
嘉明は夜風に当たろうと考え、静かに部屋を出る。警備にあたる小姓へ心配しないよう告げて城の中庭に向かうと、そこに先客がいる事に気が付いた。
「――っ」
満月に近い丸い月を見上げながら、縁側に腰掛け杯を傾ける横顔。だらしない着流しは、少し土に汚れている。
「団……」
嘉明が愛称を呼ぶと、彼――勝手に出て行ったはずの団右衛門が振り向く。