妖魔滅伝・団右衛門!
第7章 さすらい団右衛門
「よっ。あんたも一杯どうだ?」
本来なら団右衛門は、顔を合わせた瞬間に首を切られても文句は言えない立場である。しかし嘉明は、頭をくしゃりと押さえると隣に座った。
「……いただこう。酒は嫌いじゃない」
受け取った杯の中身を一気に飲み干せば、乾いた喉は潤い、冷えた体もほのかに熱を取り戻す。嘉明は、固まっていた心がほぐれていく感覚に身を任せ、団右衛門にしなだれかかった。
「よく城の中に入れたな。門前払いにされなかったのか?」
「されるだろうと思ったから、勝手に侵入したんだよ。誰が文句を言おうが、あんたが許せばオレは戻れるからな」
「私が許さず、首を取るとは思わなかったのか?」
「いるか? オレの首」
団右衛門が首を指差すと、嘉明はその指を手に取り握り締める。
「信じてくれと請うたのはお前だ。ならば信じてやるのが主君の務めだ」
団右衛門の手は熱く、ふと嘉明が目を向ければ顔も赤い。目が合うと団右衛門は嘉明を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「なんか今日のあんた、可愛くて調子狂うな……」
全身に感じる団右衛門の温もりに、嘉明は瞳を閉じる。