妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「そう……ですか。そうだと思っていました。生き別れた家族に、偶然再会するなんて出来過ぎていると思っていたんです。嘘を吐いて近付いてきたって事は、あの人は敵なんですよね? それも鬼の存在を隠していたんです、きっと――」
「へぇ、この前は悠久のために腹まで切ろうとしたのに、随分な言いようだな」
八千代はその指摘に、身を乗り出し団右衛門の肩を掴んだ。
「それは、兄のためではなく自分のけじめです! それに、鬼だなんて思ってなかったから、一度の失敗で見捨てられるのは可哀想だと思って」
「八千代」
だが団右衛門は、その八千代の腕を掴むと顔を上げる。団右衛門の鋭く真理を突く眼差しに、八千代は言い訳を止めてしまった。
「記憶が戻った事にして、嘉明の前から立ち去らないか? 悠久は偽の兄だった、けれど本物の家族を思い出したから、帰って顔を見たいと打ち明けて」
「どうして……そんな事」
「それが一番、嘉明を傷付けない方法だ。八千代、あんたが嘉明に惚れてるのは分かってる。それが本物だって事は、オレも分かる。心から惚れた奴なら、泣かせたくないだろ? 嘉明を想うなら……身を引いてくれないか」