妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
八千代の体が、小さく震える。汗は絶えず流れるようになり、唇は切れそうな程強い力で噛み締めていた。
「鬼は長く人の精を奪うため、餌の人間を鬼に変質させる。その子も鬼の力で成長が止まった。そして長い時間を掛けて精を奪われながら……鬼となったんだ」
京で、秀吉が八千代を見て驚くのは当然の事だった。今ここにいる八千代は、まさしく秀吉がかつて会った事のある八千代そのものだったのだから。
「八千代……あんたは中村で鬼に攫われ、鬼に変えられたんだ。そして二年前退魔師を殺した時も、鬼に加担しているな。これは証人を見つけた。オレを出し抜いて行方不明になった嘉明の部下を殺したのも、あんただ。だから死体に、鬼なら有り得ない刀傷があったんだ。心臓を食いちぎったのも、あんただな」
「――違う」
「違わない。あんたは鬼が叫ぶ欲のままに、心臓を食らったんだろう。だがあんたの体は、所詮は無理やり変質させられた鬼の劣化品だ。精や魂で強化される性質までは引き継がれていない。それを知らなかったあんたは満たされない欲に焦り、一人、また一人と犠牲者を増やしたんだ」