無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　
「違う!!」

「違わねぇよ!!　じゃあなんで、あんたから鬼の気配が消えなかったんだ!?　それはあんた自身が、鬼だったからだ！　清正と頑なに顔を合わせなかったのは、退魔師である清正に正体を見破られると困るからだな！　茶会の書状を嘉明に渡さなかったのも、あんたの正体を知る秀吉と会わせたくなかったからだろ!?　京で妖魔に襲われた時姿を消したのは、オレの隙を見て殺すためだ！」

　団右衛門は畳を殴りつけ、感情のまま怒鳴りつける。それも過ぎると、長い溜め息を吐き、深呼吸して呟いた。

「こんな事知ったら、嘉明は絶対泣くだろ……」

　おそらく八千代が嘉明に近付いたのも、鬼の指示である。記憶を失った可哀想な童を、嘉明が無視するはずがない。八千代の幼い容姿を利用し潜り込み手綱を引いて、本当ならば団右衛門が嘉明と出会ったあの日、嘉明を手中に収める腹積もりだったのだ。

「こんな事嘉明に知らせたくねぇんだよ。あんただって分かるだろ？　お願いだから何も悟らせず消えてくれよ。そうすれば、今までやった事は見逃してやるから」

　団右衛門の声は震え、消えそうなくらいに小さかった。八千代は団右衛門らしくない消沈した表情に、口を開く。