妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
八代は一二三を人質として見せつけながら、嘉明を抱える。そして終わりなき地獄へ――光のない鬼の世界へ、嘉明を連れて行った。
暑さも寒さもない、紫色の空。そこは時々流れ星のように、火の玉が流れる。嘉明は申し訳程度に敷かれた藁の上に放り出され、着物を全て剥ぎ取られる。抵抗しようと手足に力を込めるが、鬼の毒は変わらず強力であった。
「やめ……はな、せっ――」
「そう嫌がるな、すぐに良くなる。どうせ抗えぬなら、素直に楽しめばいい」
すると嘉明に覆い被さる八代に、連れてこられた一二三が殴りかかる。
「ね! ねっ!!」
しかし、所詮は子どもの力。蚊に刺されるより弱い反抗である。だが八代は振り返ると、一二三に爪を向ける。
「処分を忘れていたな。仲間を呼ばれては困る、もうお主に価値はない」
せめてもの慈悲のつもりなのか、身動きの取れない嘉明の目に入らないよう、八代は自身の背中で惨劇を隠す。しかし一二三の断末魔と、八代が手に浴びた、一二三の琥珀色をした血は隠しきれなかった。
「きさ、ま……っ!!」
何事もなかったかのように、再び覆い被さる八代。嘉明は嫌悪を隠せず、八代を刺し殺す程に睨む。