妖魔滅伝・団右衛門!
第8章 八千代の想い
「あれは退魔師が手懐けた妖魔か? 会って間もない相手に、そこまで怒るか」
「くっ……」
嘉明の口は、毒のせいで言葉にならないがぱくぱくと動く。内容は分からないが、八代を罵倒している事は間違いなかった。
「少し言葉を交わした相手に、それだけ愛を向けられるのだ。それより長く嘉明と過ごした儂は、もっと愛されるべきだろう」
八代はそう呟き、嘉明の耳を食む。だが嘉明にとって衝撃は、無理に高められた快感ではなかった。
「あい……?」
「そうだ。嘉明は儂を愛し妻となり、永遠の命を得て、つがいとして暮らすのだ」
「っ、馬鹿な……ぁっ!」
八代は嘉明の首に団右衛門の跡がある事に気付くと、そこを舐めて、同じように吸い上げる。赤くなったそこは、もはやどちらに付けられた跡なのか分からなくなっていた。
「子は男と女、どちらがいいか? いや、どちらも作ろうではないか。孕んだら人間界へ戻り、その子に嘉明の跡を継がせよう。鬼の国を作り、天下を鬼が取るのだ」
愛おしげに腹を撫でられると、嘉明の血の気が引く。当然嘉明に子を産む機能はないが、鬼の力がどこまで及ぶのかも知らないのだ。