妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
八千代が汲んできた水は、山の奥から採取した清流である。毒を流すためには、清浄な水が一番手っ取り早いのだ。団右衛門はそれを嘉明に飲ませると、八千代に目を向けた。
「こっちもこっちで、鬼の気配が消えないな。あんたら、主従そろって耐性がなさすぎだろ」
八千代には、嘉明と同じく鬼の気配が纏わりついている。話を聞けば、八千代は鬼に体を乗っ取られたと言う。鬼が寄代として体を繋げたのだろうと踏んだ団右衛門は八千代に邪を防ぐ札を渡し、繋がりが切れるよう念を込めたが、未だ効果は見えなかった。
「面目ないです……ぼくが、もっとしっかりしていたら、嘉明様がこんなにも苦しむ必要はなかったのに」
「あーあー、そう泣きそうな顔すんな。世の中にゃとんでもなく霊媒体質の人間が稀にいるんだ。これは鍛えてなんとかなる問題じゃねぇから、仕方ねぇよ」
「団さん……お優しいんですね。お願いします。嘉明様をどうか一日も早くお救い下さい」
八千代は隙さえあればこの調子だが、礼儀正しい態度に団右衛門はむず痒さを覚える。放浪した時期が長いせいか品行方正な振る舞いはどうも苦手になっていたのだ。