妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
退魔師の精に力があるなど、団右衛門が今考えた真っ赤な嘘である。しかし、世には性交により力を得る房中術なる物があるのも事実。口に出せば、それらしい説得力は備えていた。
「……本当に、早く治るのか?」
嘉明の厳しい目線も、少し緩和されている。その機を逃す団右衛門ではなかった。
「そりゃもちろん! オレ様は最強の退魔師・団右衛門だ、鬼もあんたからオレの気配を感じたら、嫌がって逃げ出すだろうさ」
嘉明は目を逸らし、しばらく考え込む。そして小さく頷くと、団右衛門を真っ直ぐに見つめた。
「――ならば、早く治してくれ。此度の失態、私は何をしても取り返さなければならない。そのためなら、一時の恥や屈辱は飲もう」
「決まりだな。言っておくが『治療』なんだから、文句は言うなよ」
「言わぬ。だが……このような事、他言無用だぞ。分かったな」
他言無用などと言われなくとも、嘘が露見しないよう、団右衛門は初めから黙っておくつもりだ。まんまと嘉明を口車に乗せた団右衛門は、上機嫌で寝巻きを脱がせ、嘉明の胸に貼ったままの札を剥がした。