妖魔滅伝・団右衛門!
第2章 嘘つき団右衛門
「その根拠は?」
「その時鬼は八千代を乗っ取ってる。その状態で嘉明に気付かれないよう殺して、なお捕まえるのはなかなか面倒だろ? うっかり八千代の姿での殺しでも見られたら、計画はおじゃんだ。だったら手間の掛けず、飛ばした方が確実だ」
団右衛門の言葉は、理にかなっていた。ただ喚くだけでなく論理を持って説明する姿は、頼れる退魔師である。
「異空間を破るのはそう難しくない。位置さえ特定できれば、すぐ助けられるさ。嘉明も目覚めて、時間も力も今以上捜索に回せる。安心しな」
「うむ、頼んだ。それで……今、八代はどこにいるか分かるか?」
「あの日あそこに封じてから二日くらいは寺で暴れていたが、もう破られてる。気配はすぐ側にいるくらい濃いんだが……濃すぎて、逆に特定は出来ないな」
八千代を探した結果は、部下を行方不明にして、精を取られ鬼を強くしただけだ。嘉明は拳を握り、悔しさのあまり舌打ちする。
「……鬼を侮った私の失策だ。人質を取られ、身動きの取れない事態に至る時点で負けだったのだ。奴を倒すのに、正面から力押しは不可能だ」