テキストサイズ

妖魔滅伝・団右衛門!

第2章 嘘つき団右衛門

 
「嘉明、あんたが鬼に捕らわれて精を取られると、それだけで鬼が段違いに強くなる。あんたを取られるのは、絶対に避けなきゃならない」

「……私は動くなと。分かっている、今も行方のしれぬ皆のためにも、もう策もなしに外へは出ない」

 一見すればそれは自重しているようであるが、団右衛門は気を付けて見ようと決心する。策がなければ出ない。すなわちそれは、策があれば自分が鬼を倒したいという心の表れである。策があろうとなかろうと籠もってくれた方が団右衛門としては有り難いのだが、隙あれば戦おうとするのは武人の性。止められるものではないと、団右衛門も心得ていた。

「心配すんなって。オレ様は最強の退魔師団右衛門様なんだからよ、あんたが出る幕もなく倒してやるさ」

 ならばせめて気を楽にさせてやろうと、団右衛門は嘉明の頭に手を伸ばし撫でる。そして、精一杯の笑顔を見せた。

「――そうか」

 気安く接すれば怒って元気も出るかと思ったが、嘉明は無愛想だが大人しく団右衛門に撫でられたまま頷く。疑いも見せず委ねられると、団右衛門の方が意表を突かれ顔を赤くした。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ