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硝子の挿話

第16章 素懐

「あなたたち今まで何をしていたの?」
「ちょっと警護の配置に付いて相談があったんです」
 ユアがそう答えると納得したように肯く。ハクレイは基本的に護衛の職に就いているせいか、私語を極力慎しんでいるようだ。
「あ、お兄ちゃん!お帰りなさい」
 すっきりとした笑顔で、嬉しそうなユラが近づくとユアは抱き上げて笑った。
「ただいま…今回本当に連れてきてよかったみたいだね。ありがとう急なわがままを聞いてくれて」
 お辞儀して言うユアに、とんでもないとティアは左右に強く首を振った。

「こちらこそユラちゃんと楽しい時間を過ごせてよかったです」

 休憩の終わりを告げる大きな太鼓の音と共に、巫たちの舞いも佳境に入る。楽師たちの奏でる調べも激しさを増してきた。
 それを確認するとティアがいそいそと身繕いを始めた。
「私そろそろお暇(いとま)しますね」
 彼女が深々と頭を下げる。すると、サミアが噛み締めるよに見送りの言葉を告げた。

「…いってらっしゃい」
「気をつけて」 

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