硝子の挿話
第28章 埋没した色彩
大きな窓を覆う布を二箇所止めたカーテンの直ぐ側に豪奢な机と椅子があり、こちらに背中を向けているメイスがいた。
大きな椅子に座り、ゆっくりと振り返る。その端正な顔は、ケミナスがもっと…ずっと歳を取ったような顔をしている。権力にものを言わせ幾人も女性を娶り腹の違う子供も多く居る。ハクレイの妹もその一人なのだ。
「私から誕生祝いだ…」
扉の前にかけられたカーテンを開けると、其所には思いもしない顔がありハクレイはきょとんとした。
ゆっくりと此方に向かい歩いてくるのはユアやユラの父親の姿。ユアによく似た美麗の面差しは暗雲の色に影っている。息子であるユアとの仲は現在進行形で最悪だが、ハクレイには昔から優しく接してくれているし、マテリアにとっては初恋の相手でもあった。
クックッと喉を鳴らして笑うメイスにハクレイは嫌な感じがし、無意識に胸の辺りを掴んで一歩足を退かせた。
「今日はお前の誕生日だったな―――祝いとしてひとつ真実を教えてやろう」
そう切り出したメイスの意図が掴めない。ハクレイは柳眉を顰めて訝しげに視線を上げる。顔を反らしたまま立っているユイナとメイスを交互に見た。
顔を伏せたまま、辛そうに立っているユイナの前に直属騎士である黒騎士に顎をしゃくる。ハクレイが思うより先に突き飛ばされる形でユイナの腕の中にいた。
「よく聞け、ユイナがお前の実の父親だ」
父親―――?
実の……?
唐突な言葉にハクレイは思わず後ろを振りむく。今メイスが言った言葉に眉間を顰めたまま、ユイナを見上げると瞳を伏せながらハクレイから視線を背けた。
大きな椅子に座り、ゆっくりと振り返る。その端正な顔は、ケミナスがもっと…ずっと歳を取ったような顔をしている。権力にものを言わせ幾人も女性を娶り腹の違う子供も多く居る。ハクレイの妹もその一人なのだ。
「私から誕生祝いだ…」
扉の前にかけられたカーテンを開けると、其所には思いもしない顔がありハクレイはきょとんとした。
ゆっくりと此方に向かい歩いてくるのはユアやユラの父親の姿。ユアによく似た美麗の面差しは暗雲の色に影っている。息子であるユアとの仲は現在進行形で最悪だが、ハクレイには昔から優しく接してくれているし、マテリアにとっては初恋の相手でもあった。
クックッと喉を鳴らして笑うメイスにハクレイは嫌な感じがし、無意識に胸の辺りを掴んで一歩足を退かせた。
「今日はお前の誕生日だったな―――祝いとしてひとつ真実を教えてやろう」
そう切り出したメイスの意図が掴めない。ハクレイは柳眉を顰めて訝しげに視線を上げる。顔を反らしたまま立っているユイナとメイスを交互に見た。
顔を伏せたまま、辛そうに立っているユイナの前に直属騎士である黒騎士に顎をしゃくる。ハクレイが思うより先に突き飛ばされる形でユイナの腕の中にいた。
「よく聞け、ユイナがお前の実の父親だ」
父親―――?
実の……?
唐突な言葉にハクレイは思わず後ろを振りむく。今メイスが言った言葉に眉間を顰めたまま、ユイナを見上げると瞳を伏せながらハクレイから視線を背けた。