愛の裏側
第2章 *奪われたハジメテ
「小さい頃、かぁ…。実は私、小さい頃の記憶って、あまりないんです」
「…俺も。 …覚えてないってよりは、思い出したくないんだ」
何か複雑な事情でもあるのだろうか。
そんなこと本人に聞く勇気はないんだけど。
記憶がないって言っても、
『クレープって、実際中の具より皮の方が美味しいと思う。もちってした食感が凄く美味しい』
―――って、小さい頃誰かと話した記憶だけは、今も健在。
何故かそれだけはよく覚えてる。
「あ。そういえば気になってたんですけど…この前…家に両親いませんでしたよね?」
「あぁ。…敬語に戻ってる」
「…んと、お仕事?」
恵斗は黙って首を振った。
その表情は、怒りや悲しみが混り合ったようだった。
「…家族関係のことは、もう口に出すんじゃねぇぞ。 …俺は家族が嫌いなんだ」
誰だって、嫌いなものはある。
人に教えたくないものもある。
けど、気になっちゃうよ。
私、あなたのことがもっと知りたい。
全部、知りたい。