
愛の裏側
第3章 *すれ違う心
「藍いる?」
ふいに耳に入ってきた、この声。
久し振りに聞いたかもしれない。
私の名を呼ぶ、浅桐先輩の声。
「何ですか?」
「あ、藍。…あのさ、この前言ってただろ。また行こうって。今日、いい?」
その突然の誘いにあたふたしながらも、「大丈夫です」と満面の笑みで答える。
すると浅桐先輩は私の頭を優しく撫でて、抱き締めた。
こんな廊下でそんなことされると…皆(主に女子から)の視線が痛い。
「あ、あの。先輩…」
「藍ってセックスしたいんだ。 …する?」
だから場を考えてください。
そんな大声で言ったのはわざとですか、ねえわざとですか。
「したいなんて言ってません!え、えっちなのは嫌いです」
「あーれ。俺さっき聞いたけど?…嘘ついたな」
そうやって怪しく笑うと、くいっと私の顎を持ち上げた。
ちゅ、と触れるだけのキスをした。
「悪い子にはお仕置きしなきゃな、藍」
まったく、人前で何てことをしてくれるんだろう。
ザワザワとする廊下の中で、私は1人顔を真っ赤に染めていた。
