
愛の裏側
第3章 *すれ違う心
「未央…。別に私、浅桐先輩と付き合ってるとかじゃないし、その――…」
「じゃあ何でキスなんかすんの?」
その問いに対する答えは見つからない。
私だって、わからない。
何で浅桐先輩が私にあんなことするのかなんて。
黙る私を見て未央は、
「…言えないんじゃん」
そう言って足早に自分の席に戻った。
心の中で何かが崩れた気がした。
1年のときから築いてきた、私達の友情が、今この瞬間に、崩れた気がした。
「…あの。先輩っ」
弱々しい声で、私に話しかける後輩らしき男子。
よく見ると、さっきのあの子だ。
はねた黒髪に、私より少し小さい身長。
私はすぐに涙を拭い応えた。
「どうしたの?誰かに何か用?」
「亜佐美先輩にです。…ちょっと来てください」
ぐいっと引っ張られる。
私の腕を掴むその手は、案外骨ばってて力強くしっかりしている。
窓の外から見たときはあんなだった彼が、少し男らしく見えた。
