
愛の裏側
第3章 *すれ違う心
未央とちゃんと話したいのに、という気持ちと、
この子に応えてあげたい、という気持ちが、
交差する。
「えーっと…何くん?」
「蒼」
ちらっと見えた彼の顔は、怒りを押し殺したような表情で、下唇を強く噛んでいた。
え、私、何もしてないよね?
怖くなった私の心臓は、どくどくと大きく鳴る。
蒼くんは次々と階段を上っていく。
「え、ちょっと。この上は立ち入り禁止の――…」
私の腕を掴んだ手と反対の手でポケットに手を入れる。
その手には、鍵。
ガチャ、と重いドアが開くのと同時に、強い風がびゅうっと吹いてきた。
「屋上…」
「ちょっと寒いよね?風の当たらないとこに行こ」
いきなり敬語がなくなった彼におどおどしながらも、私は引っ張られるがままに陰へ隠れた。
