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闇夜に輝く

第15章 営業中のトラブル

フロアにいた海斗にも聞こえるくらいの騒音がキッチンから聞こえてきた。
きっとカウンターのウエイティング客からはかなりの音だったに違いない。何事かと驚いてカウンターの奥を覗き込もうとしている客の姿が見えた。

そして増田さんが西野さんを引きずるようにキッチンから出てきて、そのままバックヤードへ消えていく。と、同時に増田さんからインカムが入る。

『14番、延長確認ストップ!やっぱり西野がシャンパンボトルのオーダー取ってたらしい。すぐ持って行かせるからちょっと待て!』

『ストップ、了解』 『了解』

坂東さんと海斗が答える。

山田君と秋山さんは先程の音と増田さんの豹変ぶりにフリーズしてしまい、しきりにバックヤードの方を気にしている。
海斗が口頭で2人に声をかける。

「そっちはいいからちゃんとフロア見てて!俺がシャンパンクーラー用意するから、山田君はグラス準備!秋山さんは一旦交換物ストップ!リクエストコール対応に切り替えて!」

そして増田さんにインカムを飛ばす。

『増田さん、増田さん、オーダーはシャンパンだけですか?』

『いや、チーズ盛りも入ってる!チーズ盛り!』

『チー盛り了解。一旦フロアを新人に任せて俺が速攻で作ります。ついでにお詫びの小さいフルーツ盛りも作っときます』

『頼んだ!それから坂東、ホールが厳しくなるから少し手伝ってやってくれ。頼む』

『了解です』

普段であれば坂東さんは付け回し担当の為、それに集中し他の業務には基本的に手を出さない。
なぜなら売り上げの7割がこの付け回しの腕にかかっているから。
客の好みのキャストを予想して席につけて客の顔色を見ながら好みを見定めていき、指名に繋げる。
また、バラバラの時間で入ってくる客に満遍なく女の子をつけて調整していかなければならない役割もある。
それに加えて、指名客の来店予定時間をキャストから聞いたり、接客を終えたキャストからそれまでついていた客の情報を聞き出したり、キャストの上がり時間を計算しながら接客させたりと常に頭をフル回転させながら付回しを行う。

よって、坂東さんがいつでも自由に動けるようにするのが他のボーイ達の役割でもある。

しかし今は新人2人のスキルが足りないので、坂東さんの手を借りざるを得なくなってしまった。

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