闇夜に輝く
第18章 サイドストーリー 〜尊と楓〜
2時間が過ぎ、落胆と怒りが混ざったようななんとも言えない感覚がピークに達した頃、ファミレスの窓越しに冬の寒空の中、タケルは現れた。
入口のレジ前で不安そうな顔で店内を見るタケル。楓と目が合う。
タケルが笑顔を向ける。楓は体温が少しあがるのを感じた。
自分が今まで研究して得た最高の営業スマイルとは違い、暖かみのあるタケルの笑顔に楓は戸惑った。
一瞬でそれまでの苛立ちが消え、来てくれた嬉しさで涙かこぼれた。
それを見たタケルはオロオロしながら近づいてきた。
その姿はあまりにも可愛く、子犬みたいに思えて楓は途中から泣き笑いになってしまった。
タケルがかじかんだ手を寒そうにさすりながら不安げに座ると、楓は冷めきったコーヒーを少し口に含み気持ちを整え涙を拭いた。
コーヒーをテーブルに置くと明るい楓に戻っていた。
「もう!来てくれないのかと思ったよ~」
「ごめんなさい。歩いてきたら時間がかかっちゃいました」
「え?歩いてきたの??」
楓は店にばれない様に電車で10分ほど離れた駅を指定していた。
タケルはなぜかここまで歩いてきたという。
とっくに始発は動いているはずなのに。
「俺、あんまりお金に余裕なくて…。頑張って走ったんですけどやっぱり疲れちゃいました。なので途中から歩いてたので遅くなりました」
そう言って困ったように笑う。
普段の楓であればこんな金のない男に用はないはずなのに。
だけど楓は自分が勝手に渡した紙切れのために、タケルが冬の早朝に革靴で走っている姿を想像して何だか嬉しくなってしまった。
そして嘘と虚栄しかない世界に長くいた分だけ、タケルの飾らない姿を愛おしく思った。
タケルと話していると調子が狂う。自分の周りには格好つけたがる男しかいなかった。
しかしこの男はぼんやりと楓の前に座っている。なのにどこか格好良い。
普通の男であれば、楓に興味がないフリをしておきながらも、しっかり胸元だけは見てきたりするものなのに、それもない。
入口のレジ前で不安そうな顔で店内を見るタケル。楓と目が合う。
タケルが笑顔を向ける。楓は体温が少しあがるのを感じた。
自分が今まで研究して得た最高の営業スマイルとは違い、暖かみのあるタケルの笑顔に楓は戸惑った。
一瞬でそれまでの苛立ちが消え、来てくれた嬉しさで涙かこぼれた。
それを見たタケルはオロオロしながら近づいてきた。
その姿はあまりにも可愛く、子犬みたいに思えて楓は途中から泣き笑いになってしまった。
タケルがかじかんだ手を寒そうにさすりながら不安げに座ると、楓は冷めきったコーヒーを少し口に含み気持ちを整え涙を拭いた。
コーヒーをテーブルに置くと明るい楓に戻っていた。
「もう!来てくれないのかと思ったよ~」
「ごめんなさい。歩いてきたら時間がかかっちゃいました」
「え?歩いてきたの??」
楓は店にばれない様に電車で10分ほど離れた駅を指定していた。
タケルはなぜかここまで歩いてきたという。
とっくに始発は動いているはずなのに。
「俺、あんまりお金に余裕なくて…。頑張って走ったんですけどやっぱり疲れちゃいました。なので途中から歩いてたので遅くなりました」
そう言って困ったように笑う。
普段の楓であればこんな金のない男に用はないはずなのに。
だけど楓は自分が勝手に渡した紙切れのために、タケルが冬の早朝に革靴で走っている姿を想像して何だか嬉しくなってしまった。
そして嘘と虚栄しかない世界に長くいた分だけ、タケルの飾らない姿を愛おしく思った。
タケルと話していると調子が狂う。自分の周りには格好つけたがる男しかいなかった。
しかしこの男はぼんやりと楓の前に座っている。なのにどこか格好良い。
普通の男であれば、楓に興味がないフリをしておきながらも、しっかり胸元だけは見てきたりするものなのに、それもない。