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闇夜に輝く

第23章 帰り道

今日来ていたのは、
理子さん、楓さん、モエさん、杏奈さん、結衣菜さん、リンさん、咲さん、そして洋子さん。

海斗はキャストに対してどこか一線を置いて、心の距離が近くなり過ぎないように心がけている。
恋愛感情を意識的に遮断出来ないと、この仕事は難しい。
ひいき目や恋愛的好意を持って接する事に本人も周りも敏感に反応するキャスト達。
日常的に疑似恋愛を仕事としているキャバ嬢という人種は特にそういった機微を見抜く。
なので感情を抑えるようにコントロールしてきた。

だから急にそんな風に聞かれても答えるのが難しかった。
悩みながらも自分の気持ちを確かめるように話す。

「今日来てた女の子達はみんな売れっ子だからなぁ。理子さんは綺麗でおしとやかだし、楓さんはノリが良くて話しやすいし、モエさんはほんわかしてて優しいしなぁ。杏奈さんと結衣菜さんはとにかく笑わせてくれるし、リンさんの博多弁は愛嬌があってかわいいし、咲さんは守ってあげたくなるような危なっかしさが小動物ぽくていいんだよな。洋子さんは頼りになるお姉さんって感じで。でも、強いて言えば咲さん…、かな」

「へー、なんで咲さんなの?」

「んー、咲さんが俺にとっての初めての担当で、俺の仕事にも影響を与えてくれた存在ってのもあるから。だからどちらかというと、同志って感じかな。咲さんが仕事で上手く行った時も、いかなかった時も感情移入の度合いが他のキャストとちょっと違う気がするし」

「そうなんだ。私も咲さんがいい。一番話しやすかった。他の人はお姉さんって感じだったけど、咲さんは友達みたいに接してくれたから」

「あー、なるほどね。うん、確かに咲さんはどんな人にでも謙虚かもな。お客さんの悪口も言わないし。我が強いってタイプでもないから話す人に合わせた会話が出来るんだよね」

「ふふふ、お兄ちゃんっていつでも仕事モードなんだね。女性を見る視点が普通となんか違う」

「そうかも。あの子達はやっぱり女性としては見れないのかもしれない。仕事仲間だからね」

そう誤魔化しつつも内心焦ってしまった。
いつからだろう。女性を商品的視点からでしか見れなくなったのは。

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