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闇夜に輝く

第25章 爆弾処理マスター

いつの間にか優矢君がカウンター席に座っていた。
海斗は気にすることなく元の席に座り、ウーロン茶を煽る。
そして満足に相談に乗ることもできない自分への不甲斐なさや、西野さんに対するやるせない怒りが込み上げる。
なぜ西野さんは帰ったのか。杏奈さんの想いも気にせずに、自分の事だけしか考えずに。
オレ達は黒子だろう。なぜ自分が楽な方、楽しめる方にしか行動しないのか。
なぜあんなにあからさまに不機嫌さを顔に出せるのか。自分は何も悪くないと思ってるのか?何を考えているのか分からなかった。
そんな疑問がふつふつと湧いてきて訳が分からなくなった。

不意に横にいた優矢君がカウンターに入り、無言でウーロン茶を継ぎ足してくれた。

「あ、ありがとう」

「うん。海斗さんも落ち着いて」

「あ、うん」

「海斗さんはいい人すぎなんですよ。この期に及んでまだ、西野さんを理解しようとしてる」

「??」

「西野さんはね、海斗さんと違って自分が主役なの。だから海斗さんには不機嫌になった理由がわからないんじゃないですか?」

「自分が主役って?」

「うん。西野さんはね、こう考えたんだと思う。俺のエースキャストが取られたって。それで自分の歩合が下がるって。杏奈ちゃんと仲の良い結衣菜ちゃんが海斗さんを褒めるから影響されたんだって。海斗さんが来てからどんどん自分の立場が悪くなったって。全て海斗さんのせいって事らしいです」

海斗は何を言われているのかサッパリ分からなかった。
自分が悪いのか?海斗は増田さんから与えられた業務に真摯に取り組んでいたつもりだった。
誰かの脚を引っ張ろうとは微塵も思っていなかった。
なのに何故そう言われなければならないのか。

それに、キャストを稼がせるからボーイの給料が上がるわけで、自分の給料をキャストが自動的に運んでくるわけじゃないだろう。

無言で考え続ける海斗。その様子に何かを察した優矢君が同情した顔で続ける。

「まぁ、あの人の事は考えるだけ無駄っすよ。感情を殺す練習だと思ってスルーする方がいいと思います」

ふと、思い出した。

『感情に左右されては仕事にならない』

という増田さんの言葉。
今の海斗は西野さんに怒り、杏奈さんを本気で心配していた。
確かにこのままでは何も解決しなそうである。

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