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闇夜に輝く

第25章 爆弾処理マスター

そんな事を考えていると優矢君がまたつぶやく。

「それにそろそろ兄貴のあれが出そうだなぁ」

そう言って更衣室の方をチラリと見た。
すると海斗の後ろから坂東さんもカウンターへやって来て言う。

「きっと今頃、増田さんもタイミングを見計らってる頃だろうな」

そう意味深な言葉と共にカウンター席に座り会話に混ざってきた。

海斗は気になり聞く。

「あれって何ですか?」

「ん?よく耳を澄ましてればわかるよ」

坂東さんがニヤリと笑みを浮かべてそう言う。
その言葉に海斗がバックヤードの方に意識を向けたその時、

「おい杏奈!調子に乗って言いたい放題もいい加減にしろ!何様だ!西野も海斗もお前の上司なんだぞ!そんな口の利き方しか出来ないんならもういい、辞めちまえ!!」

増田さんの怒鳴り声がフロアまで聞こえてきた。

ボーイに怒鳴ることや注意する事ははあっても、キャストには絶対的に優しい増田さん。
たとえキャストが待機でうるさい時や、ヘアセットやドレスが手抜きなキャストがいても、自分で言わずに必ず誰かボーイに注意させに行く。
そして増田さんはキャストと世間話や最近あった面白い話などでキャストのテンションを盛り上げる事に終始していた。
そんな増田さんが、男子スタッフに怒るような口調で杏奈さんに怒鳴っていた。

「でた〜!増田さんの伝家の宝刀!」

坂東さんが面白がったような口調で言い、笑っている。
海斗は杏奈さんにあんな事を言って本当に辞めさせるつもりなのかハラハラしていた。

その後は荒れた様子もなくさらに20分程何かを話しているようだった。
しばらくして、私服に着替えた杏奈さんが泣いた目を真っ赤にしながらカウンター席に来た。

「さっきは生意気な事を言ってすびばぜん」

途中からまた泣いてしまった。
すると坂東さんが優しく語りかける。

「うん、大丈夫だよ。みんなわかってるから。明日もよろしくね。優矢、送りの車まで送ってあげて」

「りょうかーい。杏奈ちゃん行こう」

「はい。海斗さん、本当に…」

そこまで言って言葉に詰まってしまう杏奈さん。海斗はもう気付いていた。

「うん、明日また会おうね」

「はい。お疲れ様でした」

そうして杏奈さんは帰っていった。

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