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闇夜に輝く

第26章 サイドストーリー 若菜の夏休み

そして新しい家での生活が始まった。

毎日毎日その女の人に怒られた。食べ方が汚いとか、汚い血が流れてるとか、近づくんじゃないとか。

その家には若い男の人も住んでた。
制服姿がかっこよかった。
だけどいつも不機嫌そうで近づけなかった。
でもたまにお洋服を買ってくれた。すごく嬉しくて毎日着てた。そしたら女の人に怒られた。だから3日に1回って決めてた。
そしたらまたそのお兄ちゃんが服を買ってきてくれた。今度はお菓子と一緒に。
そうして唯一の楽しみがそのお兄ちゃんになった。
だってそのお兄ちゃんはこっそり教えてくれたから。

「俺と君は半分だけ血が繋がってるんだよ。だから兄妹なんだって」

わたしの世界に家族がまだ居たことが何となく嬉しかった。お母さんが死んじゃって一人ぼっちだと思ってたから。

そんなに話をするわけじゃないけど、お兄ちゃんが家にいるときはずっとお兄ちゃんを見てた。

今から考えると異常な毎日だったけど、その時はそれが普通だった。

世界が色あせて見えて何も感じていなかった。

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