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闇夜に輝く

第29章 結衣菜の秘密

「そうだ。これからもよろしく頼むな。それからちゃんと結衣菜の事に目を光らせておけよ。なんなら付き合う振りしても構わない。俺としてはその方が幾分安心なんだけどなぁ」

「さっきのメールはそう言う意味だったんですね。だけど俺はまだ、そこまで器用じゃないです」

「まぁ、結衣菜が卒業して店に戻ってきたら色々と困るか。優矢のように何食わぬ顔で接するなんて芸当は、海斗にはまだ無理そうだしなぁ」

「多分あの領域まで行くのはずっと無理だと思います」

「んー、確かにな。俺もそこまで期待してない。よく考えれば優矢を真似ようとすると今の海斗の良さが逆に弱まるのかもな。それじゃ、海斗なりのやり方で結衣菜の事を頼む」

「分かりました。しっかりと目を光らせておきます。ところで、結衣菜さんに甘すぎませんか?今回の件は90万って金を使う程の事なんですか?」

「ああ、かなりヤバい。もしも俺がパクられた場合、保釈金や罰金、営業再開までの経費を含めると損害は90万どころじゃない。それくらい高校生を雇っていたという事実はリスクがあることなんだ。ウチらはヤクザじゃないんだ。捕まるというのはなるべく避けなければならない。海斗も覚えておけよ」

「はい。スカウトする際は必ず年齢と、高校生ではないかを確認するようにします」

増田さんはニヤリと笑う。

「それにな、結衣菜には可能性を感じるんだ。いつかあの子にとって夜の世界が一番輝ける場所になる。あの子自身もまだ気付いてないだろうけどな。その為の投資でもあるんだよ」

自信たっぷりにそう答える増田さん。
このなんとも言えない魅惑的な悪い笑みに海斗はこの10ヶ月、何度となく引き込まれてきた。

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