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闇夜に輝く

第36章 スノボ旅行



昼食も終わり、海斗はタバコを吸いに外に出ようとした時、入り口付近にいた女の子から声をかけられた。

「あの、筑波さん…、ですよね?」

名前を呼ばれ振り向くとどこかで見た事があるような気がする。
だけど誰か分からず返事に困っていると、その女の子が小さい声で

「ナナです。覚えてませんか?」

と言い、ニコリと笑いかけてきた。

海斗はその名前でやっと気付いた。クリスマスに派遣会社からヘルプで来てもらっていたキャストだった。
店での大人っぽい雰囲気とは違い、ボードウェア姿のナナさんは可愛らしい雰囲気だったので気付くのが遅れてしまった。
慌てて海斗がこたえる。


「あー!ナナさん。めっちゃビックリした!覚えてるよ。こんな偶然あるんだなあ。へー、いつから来てるの?」

「昨日からです。この前はお世話になりました」

「こっちこそありがとね。この間はホント助かったよ。ナナさんもスノボするんだね。いやーホントびっくり」

「本当ですね。さっき私も気付いて声をかけようか迷ってました」

「あ、そうだね。ゴメン、めっちゃ大きい声で名前呼んじゃった。大丈夫だった?」

「あ、本名は七海ですし、一緒に来てる子達も大学の友達で私がたまにキャバで働いてるの知ってるんで大丈夫です」

「あー、よかった。ちょっと焦った」

海斗は黒服の基本である、街中でキャストを源氏名で呼んではいけないという基本的なことを忘れてしまうくらい、驚いていた。

そんな海斗の様子をどこか面白そうに見ているナナさん。

「ふふふ。筑波さんってお店にいる時と雰囲気が違いますね。もっと怖い人なのかと思ってました」

「あー、マジ?でもよく言われるんだよね。そんなに店では怖そう?」

「んー、怖いっていうより真剣というか、ピリっとした雰囲気ですね。仕草にスキがない感じで。実は今もギャップに戸惑ってます」

ナナさんはそう言って控えめに笑う。


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