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闇夜に輝く

第37章 裏引き


ミーティングを終えた海斗はあまり手応えを感じていなかった。

営業が始まってからもそれとなくつかささんの接客の様子を伺う。
しかし、すぐに結果が出るほどこの世界は甘くはない。

深夜帯になり、かなり酔った客の態度が下品になりボーイに見えないようにお触りし始めると、途端につかささんの場内指名が増える。

この日もラストまでの客がつかささんを場内指名していた。

結局こうやって場内指名を稼いでも、本指名で返ってくる率は低い。

海斗はため息をつきながら、ラストに向けて営業を続けていた。
そんな海斗の様子に増田店長が気付く。

「海斗、どうした?ため息なんてめずらしいな」

「あ、すいません。まだ営業中でした」

「まぁ、お客さんに早く帰れと思わせてしまうからな。でもそんな事は言われなくても分かってるだろう。どうした?」

増田店長はそう言いながら海斗の隣に立つ。

海斗の視線の先にはつかささんが接客をしていた。
お酒を注ぎ足す度に胸を揉まれているが、気にする様子もなく黙って作り続けている。

店的には過度なお触りに対しては注意しに行くのがルールなのだが、指名キャストがいる場合はなるべくキャストに任せるようにしている。
キャストが目で訴えてきたり、席を離れてボーイに苦情を言ってきた場合のみ注意する。
なぜなら、指名客に対しての営業方法は指名キャストの考え方が優先される。
ボーイの勝手な判断で止めに入ると怒るキャストもいるのだ。
しかし何もせず放置をしているとどんどん客がエスカレートしていくので、ボーイはあえて客席から正面になるような位置に立ち、見張っている。
そして度が過ぎる場合は指名客だろうが注意に入る。

つかささんの指名客は強制的に注意に入るラインのギリギリだった。


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