闇夜に輝く
第37章 裏引き
海斗は客席に注意を払いながら増田店長と小声で会話する。
「つかささんの席なんですが、どうしましょうか」
「あー、まぁ今の時間なら他の席からも見えないし、ほっとけば?あれがつかさの営業スタイルだしな」
「はぁ。確かに場内指名は多いんですけどね。本指名で帰ってこないんですよ。顔もスタイルもいいのにもったいないと思うんですよね」
「んー、それがあいつの限界なんじゃないか?それにこの業界って顔とかスタイルとかあんまり関係ないからな。愛嬌だったり仕草だったり一緒に酒飲んで楽しかったりの方が重要だろう。だってさ、例えキレイだとしても人形を隣に置いて何万も払う奴なんていないだろ」
「確かにそうですよね。でもお触りに対して無抵抗過ぎるのは他のキャストからもクレーム出てるんですよね」
「でもよ、どんなにボーイが目を光らせても隠れて触ってくる客もいるだろう。それがでかい会社の重役クラスの場合もある。そうすると簡単に出禁になんてできないよな。その人の部下や関連企業の人もうちの店を利用してくれてる訳だし。だからつかさみたいなキャストも必要なんだよ」
「やっぱりつかささんの売り上げを伸ばすのにも限界があるんですかねぇ」
「意識が変わらない限りはな。それに他のキャストからのクレームに関しても、つかさのようなキャストのお陰で助かってる部分もあるのになぁ。あいつのお陰で自分達が嫌な思いしないで済むわけじゃないか。それにつかさは不良っぽい客にだって嫌な顔せずに接客するしよ。海斗はまだまだ視点がキャスト寄り過ぎるんだよ。キャスト寄りの演技をしつつ、店側の立場にたった考え方でキャストとの会話をするスキルをもっと身につけて欲しいもんだな」
「はい。気をつけます」