闇夜に輝く
第38章 同伴トラブル
やたらと大きいその足音の方へ目を向けると、坂東さんが店前に出てきた。
しかし、そこに普段の優しそうな顔の坂東さんはいなかった。
眉間に深いシワを刻んだ厳しい顔つきとギラついた目でこちらを見ている。
そして、
「あれ?相良じゃねーか。お前この街で何してんの?」
普段ののほほんとした雰囲気の坂東さんとは違い、聞いたこともないようなドスの利いた声を出しながら近づき、そのままその男の髪を掴み上げる。
「お前、何でこの街にいんだよ。しかも俺のかわいい部下に何してくれてんの?」
「あ、いや…」
さっきまでの威勢が嘘のように狼狽する相良と呼ばれた男。
海斗の胸倉を掴む手から力が抜け、その手がガタガタと震えている。
坂東さんはその男の髪を掴んだまま引きずり、道の真ん中に停まっているベンツへ投げ飛ばすと、そのまま顔面を踏みつけた。
その何の躊躇もなく人の顔面を思いっきり踏み抜く行為を見て海斗は思わず顔を背ける。
車のボディと坂東さんの靴裏に挟まれた相良の顔面から鮮血が舞う。
「お前、この街から消えろって何年も前に言ったよなぁ。俺はテメーのツラァ見たくねぇんだよ」
坂東さんはそう言ってまた顔面を蹴る。
相良の顔からさらに血が噴き出すが、かまわず蹴り続けている。