テキストサイズ

闇夜に輝く

第40章 後始末



後ろから坂東さんが慌てて増田さんを抑えようとしている。が、増田さんは構わず倒れている海斗の胸倉を掴む。

「勘違いするんじゃねぇ、俺らは店を守る為にいるんだ!ツカサを守る為じゃねぇ!リスクを考えろ!女を守りたいんだったら勝手にしろ。だけどな、お前にそんな力があるのか?てめーの器はどんなもんなんだよ!」

再び増田さんの拳が振り下ろされ、続け様に蹴りが海斗の腹にめり込む。

「増田さん!落ち着いてください!」

坂東さんが必死で止めに入る。

しかし増田さんは止まらない。

「うるせぇ、てめーのチンケな正義なんかな、これっぽっちも通らねーんだよ!いいか、大事な事を教えとくぞ。てめーの筋を通したかったらなぁ、力と、金と、人脈を持て!それをフルに使う頭と行動力を身につけろ!俺は、お前らを含めたこの店を預かってんだ。口だけの正義なんていらねえんだよ!」

海斗は火の出るような顔の痛みと、全く息が出来ない苦しさから自然と涙がこぼれた。
それでも理不尽さに怒りが止まらなかった。

そんな様子を見て増田さんが言う。

「立てよ。ヤクザなんかこんなもんじゃねぇんだぞ。今のお前に何が守れるって?あ?こんなクソみたいな暴力に屈してんじゃねーよ。早く立てや」

海斗は必死に息を整えて立ち上がる。
固く握り締めた拳も僅かに震えている。

「どうした?殴り返せよ。そんな事でクビにはしねぇから」

増田さんはすでに冷静な顔つきで海斗を眺める。

海斗は拳を固めたまま、真っ直ぐに増田さんを見て応えた。

「殴られるのってこんなに痛くて苦しいんすね。よくわかりました。クソっ、めちゃくちゃ理不尽っすね。こんなのに屈してたら悔しくてたまんないっす。でも、俺は殴りません。ヤクザの土俵には上がらないっすよ」

海斗がそう言うと、増田さんは感心したように少し驚いた後、ふっと笑った。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ