闇夜に輝く
第41章 冬のとある日
少しの着信音の後、結衣菜さんが電話に出た。
「もしもーし。海斗さん久しぶりぃ」
結衣菜さんの能天気な声が聞こえてきた。海斗も気持ちを切り替えて明るく応える。
「相変わらず元気そうだねぇ。明日は何時頃会う?」
「明日は日曜日なんで午前中から夕方までお好み屋さんでバイトなんですよー。その後でも大丈夫ですか?」
「おー、ちゃんとバイト続けてたんだ。えらいねぇ。そうだ、明日は日曜日で俺の仕事が休みだから夕食、結衣菜さんのお好み焼き屋さんで食べてもいいかな?」
「全然いいですよー。何なら私が美味しいお好み焼作りますよ!」
「それは楽しみだなぁ。バイト夕方までなら終わった後一緒に食べる?おごるよー?」
「ヤッター。何時頃来ますか?ウチの店、日曜日はちょー忙しいんで予約入れときますよ」
「そうだなぁ、じゃあ18時半くらいに予約しといてくれる?」
「わかりましたぁ。私もバイト19時までの予定なので上がった後合流しまぁす」
「よろしくね。それとも焼肉とかお寿司とかが良ければ場所変えてもいいけど」
「あははは、今の海斗さんキャバクラのお客さんみたい。全然気にしなくていいですよ。私、お好み焼が好きすぎてココでバイトしてるんで」
「そっか。なんか結衣菜さん元気そうで安心したよ。じゃあまた明日ね」
「はーい、待ってまーす」
「あはは、結衣菜さんこそ、キャバ嬢の営業電話の最後のセリフみたいだよ」
「あにゃ?本当だぁ。あはは、じゃーねー」
そう言って電話が切れた。相変わらずテンションが高い。
結衣菜さんが店を辞めてから5ヶ月が経つ。今考えると店にいた時は結衣菜さんなりに大人っぽく振舞っていたのかもしれない。
それが最近は高校生らしさが戻りつつある。
海斗はバックヤードを見渡す。
シャンパンや白ワインの瓶が冷蔵庫に大量に仕舞われ、その隣にはおしぼりのケースと店ドレスが所狭しと並んでいる。
そして化粧品と香水、タバコやヘアスプレーの匂いが混ざり合った独特な香りが充満している。
きっと、高校の教室やお好み屋さんには到底ありえない空気感がここにはある。