闇夜に輝く
第42章 お好み焼き
結衣菜さんとは毎月会ってるし、込み入った話をする必要もないので、若菜がいても別段問題は無い。
「結衣菜さんって覚えてる?夏のバーベキューで一緒だったコ」
「あー、めっちゃ明るい人でしょ。覚えてるよー。結衣菜さんがどうしたの?」
突然、キャストの名前が挙がった事に若菜が不思議がる。
「結衣菜さんはウチの店を辞めて、今はお好み焼き屋さんで働いてるんだよ。増田さんに頼まれて結衣菜さんに渡すものがあるから今日そこへ行かなきゃならないんだ。ついでにご飯も食べようかなぁって思って」
「へー、辞めちゃったんだぁ。んーと、お兄ちゃんは結衣菜さんの事、どう思ってるの?」
「ん?どうって、どういう事?」
「んー、私が一緒で邪魔じゃないの?」
若菜は海斗の顔を窺うような態度で少し言いずらそうにしている。
「あはは、結衣菜さんとは何にもないよ。ただ、また時期が来たらウチの店に戻って欲しいと思ってるから連絡を取ってるだけだし。それにそのお好み屋さんって家のすぐ近くだよ。ほら駅前の」
「そうなんだぁ。え?結衣菜さんってウチの近所に住んでるの?」
「いや、家は電車でちょっと行ったとこみたいだけど、近所ちゃぁ近所かな」
結衣菜さんの家は海斗達の住んでる街の隣街にある。
流石に結衣菜さんはまだ高校生で、通っている学校が海斗達の家の近所だとは言えないが。
「今から予約変更するから、若菜も準備して」
「はーい」
そうして若菜はキッチンを片付け、出かける準備の為に部屋に戻った。
海斗は調べたお好み焼屋に電話をかけると、たまたま結衣菜さんが出てくれた。
若菜も連れて行ってもいいか聞くと久しぶりに会いたいですとのこと。
一人で入店する事は免れたため、時間は18時半のまま、人数だけ変更してもらった。