闇夜に輝く
第43章 激震
海斗がニューアクトレスに入った時には理子さんが不動のナンバーワンでそれは今も変わらない。
けれど、美香さんは理子さんが入店する前のニューアクトレスも知っている。
長年この世界でキャストの移り変わりを見てきたのだ。
「そっか。やっぱり耐えられないもんなんですね」
「そうね、ナンバーワンになる子は人一倍見栄を張って生きてるからね。結局私には経験できなかったけど」
そう自嘲気味に呟く美香さん。
その寂しそうな笑顔の裏に、すでにキャバ嬢としての旬を過ぎてしまったという自覚があるのだろう。
けれど、海斗はそうは思えなかった。美香さん自身ですら気付いていない魅力が確かにあるはずだった。
「そんな事ないと思います。だって美香さんはずっとこの店で働いているじゃないですか。20歳くらいのキャスト達と勝負してるじゃないですか。十分見栄を張ってますよ。女を張って生きてます」
「ふふ、ありがと。でも、もう疲れちゃったわ。あの子達のような振る舞いは私には出来ないもの」
そう言って俯き加減になる美香さん。
そこで海斗は今まで感じていた違和感の正体に気付いた。
美香さんはずっと無理して演じてきた。若い子に負けない様に。
美香さんくらいの年齢になればもっと落ち着いたスナックや都内近郊の店に移ることは誰でも考える。
だけど、店のランクが落ちるという事は即ち、女としての価値が下がるという事。
美香さんはずっとそれに抗ってきた。
もちろん、まだ小さい子供の為に高い時給の店にいた方が効率が良いという面もある。