闇夜に輝く
第44章 幕間 想い
社長はドライバーをシャフト部分に持ち替えると、クラブのグリップで軽く増田の頭頂部を叩く。
「フン!強情な奴め。いつまでも現場にいるから非情になれないんだよ。さっさと執行部へ上がって来い」
社長はそう言って更にコンコンと叩く。増田は頭を下げたまま言葉を続ける。
「私が現場を離れたら西野は中途半端なままになります。私は西野が執行部へ行っても問題ないと思えるまでは私も執行部へ行く気はありません。それにまだ、あの店を任せられる様な後任が育っていません。候補は決まりましたが」
叩いていた手がピタリと止まる。
「おい、あの店は立地的に経営がグレイスフルより難しいと言っていたじゃないか。その後任候補だと?誰だ、坂東か?」
「まだ直感レベルなので誰とも言えません。が、順調にいけばあと2年程です」
「…、そう言えば夏の会議に参加してた初顔がいたな。奴か」
「足りない点はありますが、光るものは確かです。今のニューアクトレスは現状、理子が大黒柱です。その理子が辞めた後、化ける可能性が高いのはキャストよりもむしろそのボーイです」
社長はゴルフクラブを手元に戻す。
それを合図に増田も顔を上げる。