闇夜に輝く
第44章 幕間 想い
自信満々の増田の表情に思わず社長が笑う。
「ククク、がっはっはっは!理子は生贄だったのかぁ。そんなに見込みがあるんだな」
「超一流の黒服を育てるには超一流のキャストがどんなものか知らなければなりません。そしてキャストの旬は短いですが、黒服は違います。そしてその黒服は辞めた理子の幻影を追いかけることになります。その黒服が一人前になり、キャストを育てるスキルを身につけても満足することはないでしょう。なぜならこの先、理子と競わせることは永遠に叶わないんですから」
「ククク、移籍させれば月に1000万は稼ぎ出せるキャストの可能性を放棄して、そのボーイに賭けるか。増田も大きく出たなぁ」
「そんなキャストをコンスタントに作り出せる黒服の方が価値があります。でもそれはニューアクトレスでしか出来ないでしょう。グレイスフルは条件が良すぎます。あそこは立地も恵まれていますし、キャストのレベルも意識も高いですから、業務をソツなくこなす黒服は育っても、試行錯誤して店のレベルごと進化させられるような黒服は育ちません」
「ほう?ニューアクトレスをグレイススフルのような最高級店に出来るとでもいうのか?あの立地で?」
社長からの質問に、それまで真面目な顔で受け応えをしていた増田が、急に笑顔になった。
「はい。私の夢ですから。黒服は見つけました。あとはその黒服がどこまで化けてくれるかによります」
ずっと欲しかったオモチャを手に入れた時の子供のような笑顔でそう答える増田。
それを見た社長が呆れる。
「ハハハ、酷い奴め。情に厚いのか非情なのかわからんな。だがそれがいい。お前の本心がどこにあるのかはこの際どうでもいいわい。お前は常に長期的利益に基づいている。そうする限り、認めよう。理子の件はもう何も言うまい、励めよ」
「はい。失礼します」