闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
海斗は今後について考える。しかし、この業界に入って1年と少し。
この店以外の経験もない。どのような事が起こり得るのか予想が出来なかった。
そしてその疑問をぶつける。
「増田さんからはあまり焦りが感じられないのですが、どうしてですか?」
「それはデメリットばかりではないからだ。確かに理子が抜けるのは売り上げ的にも痛い。だが、うまくキャストを誘導できれば長期的には今よりも売上げを伸ばせる」
「キャスト同士で競わせやすくなるからですか?」
「そうだ。今よりも確実にナンバー1へのハードルは下がる。そして不動の地位を確立するキャストはまだいないだろう。ナンバークラスのキャストは確実にお互いを今まで以上に意識するようになる。しかし、それに伴いキャスト間のトラブルも多くなる。だがな、それも含めて祭りだ。ククク、忙しくなるぞ。黒服の対応1つでそういったトラブルの火種が直ぐに鎮火するか、燃え上がるか決まるからな」
そう言って、ボーイ一人一人にプレッシャーを与える様にゆっくりと見渡す。
「まずは3月の営業だ。さっきも言った通り、理子の指名客に関して。ヘルプで着いたキャストの名刺交換、連絡先の交換を解禁する。この事は理子に了解を取ってある。よって、ヘルプもナンバークラスのキャストを優先的に付けるように。また、各担当キャストにその事を告知する事。くれぐれも理子の指名客だけだという事を徹底してくれ。また、理子が退店するまではあくまでも理子の本指名客だ。指名変えは4月からになる事も伝えるように」
「「はい!」」
「それから、3月は異動、転勤、昇進の季節だ。ウチの店は大企業の会社員や重役、社長クラスの顧客が多い。各自、担当キャストと顧客に対しての情報の共有を徹底するように。気付いたら転勤してましたとか、昇進してました、引退してましたなど絶対にない様に。いいか、ウチの店は会社ぐるみで付き合いのある顧客が多い。この部署の人には御祝いをしたのに、あの部署の人には無かったなどの噂はイメージが最悪だ。こういう事をキッチリと押さえておけば、たとえ指名キャストが退店したり、移籍しても変わらずに来店してくれる。くれぐれも顧客管理をキャスト任せにするなよ!」
「わかりました!」