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闇夜に輝く

第45章 闇夜に輝く夜の蝶



そして月末が近付くにつれて、毎日の様に客席は満席。
常にウエイティング客がいて、カウンターにも入りきらない。
普段なら他の店で時間を潰して空いた頃に戻ってくるのだが、今月はそうならない。

お陰で殺風景なエレベーターエントランスにもイスを置いて待ってもらうしかない。
大企業の重役クラスの客にその様な対応しか出来ないほど、店内にも客が溢れかえっている。
ウエイティングのお客様には制限なく好きなドリンクを提供して、失礼を詫びるしかない。

そんな状況ではボーイの数が全く足りない。気まぐれな優矢君も、週末のみ出勤の洋子さんも今月だけは毎日オープンラストで出てもらっている。

それでも足りないので、優矢君が葉山君という友達を連れてきた。
その葉山君は、ひたすらグラスを洗って拭いてを繰り返した結果、洗剤で手の皮がボロボロになってしまっていた。


そして今月は、昨年の夏の忙しさの比では無かった。
しかし、西野さんを始め、山田君や秋山さんが確実な仕事をしてくれていたお陰で、トラブルは意外に少ない。
山田君と秋山さんの成長が著しいのに加えて、西野さんの仕事に散漫さが減った。

西野さんの担当キャストは秋からC、Dランクばかりとなった。
指名客も少ないので営業中にキャストから業務連絡的な事を言われる割合が極端に減った。
さらにキャストからの不平不満は秋山さんも聞いてくれる。
営業中、西野さんが何かの作業中は他の事をしっかりと山田君がフォローする。
お陰で、西野さんは一つ一つの作業を確実に行う癖が付いた。
元々作業スピードは誰よりも速かった西野さん。
それによって昨年夏よりも各ボーイの役割分担が明確で動きにムダがない。

その相乗効果で店に活気とリズムが生まれる。
ボーイ達がバタバタしていないので、満席にも関わらず、客席は比較的落ち着いている。
何度呼んでもボーイが来ないとか、慌ててオーダー品を持っていくといった事が無く、キャスト達も忙しいはずなのにあまりイライラしない。


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