闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
海斗はなぜか突然、涙が溢れた。
慌ててその涙を拭う。
「あれれ、どうしたんですか?ボーイさん」
「すいません。急に理子さんが今日で最後だと実感してしまって。振り返ると、私にとっても日常でした。毎週この時間のこの席に村上様がお座りになって、その横には理子さんがいて…。そのお二人の姿がとてもかっこよくて。その光景を見る度に、この店の従業員であることを誇りに思っていました」
海斗はいつも考えていた。
理子さんがなぜ特別なキャストと呼ばれるのか。他のキャストと何が違うのか。
その答えに今、たどり着いた。
自分を魅力的に見せるキャストや、華やかな席に出来るキャストは沢山いる。
理子さんももちろんその才能はズバ抜けている。
でも、理子さんが最も長けている所は、
理子さんの隣にいるだけでどんな男性も周りから見てかっこよく見せる事が出来る。
それがどれほど凄い事か。
理子さんはキャバ嬢とは思えないほど上品で洗練されている。
理子さんの指名客は指名期間が長くなればなるほど、男性的魅力が増す。
なぜなら自然と理子さんの指名客として恥ずかしくない立ち振る舞いをするからだと思う。
そして今日が、その姿を見る最後だということ。
この一年、理子さんの仕事振りを見ることが出来た。それはきっととても貴重な時間だったのだろうと今になって気が付いた。