闇夜に輝く
第45章 闇夜に輝く夜の蝶
そして最後の最後に、ある人物が数人を連れて店前まで来たようだった。
フロントの優矢君からインカムが飛んでくる。
「店内取れますか?ウチの社長が橋本さんと一緒に来てます」
その瞬間、増田さんと坂東さんがピリッとした。
この街で橋本さんと言えば、北条組若頭補佐の橋本組組長の事。
この繁華街を含めた複数の繁華街の裏側から圧倒的な支配力を持っている北条組の大幹部。
そして橋本組長のお膝元の街がこの繁華街でもある。
すぐに増田さんがインカムで聞き直す。
「優矢、それってあの橋本さん?ウチの店に用があるの?」
「そうみたい。でも店の中では飲まないって言ってる。入口までだって。社長が理子さんを呼んでって言ってるよ」
「そう…か、分かった。とりあえず優矢も一緒に上がって来い。お前がいた方が断りやすいから」
「はーい」
そして増田さんが気合を入れ直し、またインカムを飛ばす。
「業務連絡、今から俺は一旦インカムを外すから。全ての業務を坂東の判断で行ってくれ。それから少しだけ理子を借りるかもしれない。その時はまたインカムを飛ばす」
「了解です」「了解です」「了解です」「了解です」「了解です」
次々に各ボーイが返事をする。
しばらくすると、エレベーターエントランスから声が聞こえてきた。
増田さんと優矢君で対応にあたっている。
何とも言えない緊張感がボーイ達の間に広がっていた。
すると突然、増田さんからインカムが飛んできた。
「理子を入口まで呼んでくれ。それから、海斗もちょっと来れるか?あ、インカムは耳から外してこいよ」
「わかりました。理子さんを連れて向かいます」
海斗が返事をした時には坂東さんが接客中の理子さんを抜いていた。
なぜ自分が呼ばれたのか疑問に思いつつ、理子さんを連れて入口へ向かう。