闇夜に輝く
第46章 黒服と担当キャスト
増田さんと目が合い、二人して苦笑いをしてしまう。
「優矢の事はまぁいい。話を戻そう。海斗はこのままで大丈夫。お前はこの業界の人間の中では珍しいタイプだ。しっかりと自分の役割を認識して全うしている。一般企業の管理職では当たり前の事なんだけどな。でもそれができる人間はそもそもこんな仕事に就かない。ほとんどのボーイは夜の仕事は楽に大金が稼げると思ってるか、他で通用しないからこの業界で働いてる。あわよくば女が食えるとでも思っている。そんな半端な心構えで仕事している奴が大半だ。でもこの業界で上にいける人間は違う。仕事に対して手を抜いたりいい加減な気持ちはないし、楽もしない。キャストに恋愛感情は持たない。それに他の仕事でも通用する人間性をもっている。海斗はそこがしっかりしている。俺の仕事は、海斗を含めてこの店の人間が最大限に働く事が出来る環境を作ることだ。だから心配することはない。引き続き、頼むな」
「はい。」
海斗は増田さんの言葉の意味が何となくわかった。
高校時代のバイト先の店長を思い出す。
可愛い女の子には甘く、男には厳しかった。
エリアマネージャーなどの店長よりも立場が上の役職の人には従順で、無理難題をバイトに押し付けていた。
店がヒマな時に話す内容は仕事とは関係ないパチンコの事ばかり。
自分のミスをバイトのせいにする事も多々あった。
それに比べて増田さんは人間的魅力や仕事のスキル、店への責任感、売上に対するこだわり、そして人生経験が遥かに高いと感じていた。