闇夜に輝く
第48章 エースとして
出勤に関する事以外にもキャストとのやり取りは色々と神経を遣う。
キャストは基本的におねだり上手なので、色々な要求を安易に許してしまうと後々苦労する。
あの時は許してくれたのに何で今回はダメなの?と言ってくるし、あの時が特別だったと言っても納得しない。
キャストは普段からワガママを聞いてもらう事に慣れているし、それを仕事としている人種。
なので上目遣い、猫なで声、プレゼント攻撃、体を密着させながらのお願いなど、あの手この手を使って自分に都合がいいように黒服を懐柔しようとしてくる。
逆に自分の要求が通らないと、不貞腐れたり、拗ねたり、不機嫌になったり、無視したり等の手法を用いて相手が折れるのを狙ってくる。
そのような時、黒服が隙を見せたり、困ったり、焦ったり、判断を迷ってしまってはいけない。
また、キャストに嫌われたくないという感情から甘い判断をするのもよくない。
基本ルールや規則は厳しくする。
けれど、キャストに納得させる際には、
「稼がせてあげたい」
「大事にしている」
「必要としている」
「期待している」
「だからこそ厳しい事も言う」
という感情を見せる。
そうしないとキャストの態度は軟化していかない。
海斗の立場は
「あいつ普段から口うるさくてムカつくけど、あいつに褒められたり認められたりした時が一番嬉しい。それにいざという時は頼りになるしなぁ」
と思われる存在になる事。
そう坂東さんから言い渡された。
海斗は付け回しや、出勤調整を日々重ねるにつれて、キャスト一人一人の行動原理、心理状況、考え方、性格をより深く理解していった。