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闇夜に輝く

第48章 エースとして



そして問題のミリオさん。

ミリオさんは山田君の担当で海斗が直接ミーティングするには問題がある。

なので、山田君に話を通す。

「ミリオさんの事なんだけど、証券会社の二人組の指名客って把握してる?」

「えーと、はい。何かありました?」

「ミリオさんの営業が積極的じゃないから困ってるって杏奈さんに言われちゃったんだよね。山田君はミリオさんとのミーティングで指名客の事は話してる?」

「すいません、あまり話せてないです。ミリオさんの場合、出勤を確保するのが精一杯で指名客や接客についてはなかなか。それに俺の方が経験が浅いので、うまく切り出せないんです」

「そっか。まず、ミリオさんの情報は把握してるよね?」

「情報っていうと、本業はピアノの先生ですよね」

「そう。それから、たまに舞台やミュージカル、ライブの生演奏も引き受けてるし、ピアノアレンジ曲のレコーディングもしてる。だからその期間は出勤日数や時間が減るし、同伴やアフターもほとんど出来なくなる。だけど、その予定が突然決まることってないはずなんだ。だから前もって予定を聞いておいてくれないかな。そうすれば他のキャストと協力して来店に繋げている場合に、この期間はミリオさんが積極的に営業をかける、この期間は他のキャストに積極的になってもらうように頼むとかの提案も出来るから」

「…わかりました。話してみます」

そう返事をした山田君の表情は暗い。
海斗は気になり山田君の顔を覗き込む様に問いかける。

「山田君、困った事があったら相談してね。普段の仕事に加えてキャスト管理やボーイ指示の仕事が増えてキツそうなのはわかるから」

「はい。あの、ミリオさんの対応ってどう進めていけばいいんですかね?あまり僕との会話にもちゃんと答えてくれなくて……」

山田君は申し訳なさそうに聞いてきた。

無理もない。なぜならホール長の役職が一番ツラい。日頃の雑務に加えてキャスト管理、フロアの管理など仕事内容が一気に増える。
なのでボーイの離職率はこの時期が一番高いらしい。
山田君もかなり追い込まれているように見えた。

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