闇夜に輝く
第48章 エースとして
見かねた海斗が軽くアドバイスをする。
「ミリオさんみたいなタイプのキャストは店に協力してほしいとかのお願いや情に訴えるのは逆効果だから気を付けて。利を説いてあげないとダメだと思うよ」
「利、ですか?」
「そう。ミリオさんはこの人は自分にとって使えるのか使えないのか感覚的に判断してる。自分に利のない人のお願いなんて全く聞いてくれない。さらっと受け流されちゃう」
「……、確かにそうかもしれません」
山田君は思い当たる節があるのか、大きく頷いている。
「今回の件に関しても、早めにスケジュールを教える事や、積極的に営業をかける時期を作る事に対するメリットを説明してあげないと。それも店側のメリットじゃなくてミリオさん自身のメリットをね」
「はぁ。なるほど。でもミリオさん自身のメリットを具体的に言葉で説明するのは難しいですし、ちゃんと聞いてくれますかね?」
「実はあの子は頭がいいよ。だから情やあやふやな言葉、店側の意見では丸め込めない。そんなやり方では大抵ちゃんと聞いてくれないし、頼ってもこない。その代わり、任せた方が都合がいいとか楽だと思える人には何でも話すし丸投げしてくる。だから山田君は担当として頼りになる、任せられるいう地位をまずは築かなきゃならないんだよ。ヒントは教えたから後は自分のやり方で頑張ってみて」
「はい。ありがとうございます。今の話はミリオさんの出勤確保をどう増やしていくかのヒントにもなりました。今までは出勤を増やして欲しいお願いばかりでした。その理由ももっと稼げますよとか、この日の出勤が足りないからとかのあやふやな言葉でした。もっとミリオさんの立場に立って考えてミーティングをしていかなければならないんですね」
「そうだね。それからキャストによってアプローチを変えていくことも必要だよ。助けてよと情に訴えた方がいい時、期待してるとハッパをかけた方がいい時、いつもありがとうと感謝を示してノリ気にさせる時、逆に、あなたの実力はこんなものじゃないはずたよと叱責する時。キャストがお客さんに応じて接客を変えるように、ボーイも担当キャストに応じてアプローチの仕方を変えていかないとね」