
闇夜に輝く
第49章 衝突
ショボンとした顔の結衣菜さんからさらに大量の涙がこぼれ出した。
「うぇ〜ん」
と、そのまま堰を切ったように子供みたいに泣きじゃくる。
「うぇ〜ん。話が難しくてよくわかんないよぉ〜」
そう言ってそのままテーブルに突っ伏してしまった。
そこかよ!と思いつつも、結衣菜さんのその姿を見た海斗には閃くものがあった。
結衣菜さんと話しているとキャストとミーティングをしている感が薄い。
海斗でさえいつの間にか結衣菜さんの事を呼び捨てにしている。
それに、不貞腐れたり、不機嫌だったりしても相手にしないと海斗自身が言っていながら結局根気よく話してしまっている。
増田さんでさえ結衣菜さんが高校生だった事が発覚した際も切り捨てなかった。
結衣菜さんには過保護とも思える対応をした。
もちろん打算もあるが、それ以上にほっておけない何かが結衣菜さんにはある。
それをなんとか接客の武器に出来ないか。
そしてその部分を具体的にわかりやすく教えてあげないと結衣菜さんは理解できない。
結衣菜さんが泣き止むのを待つ間、分かりやすく伝わりやすい言葉を探し続ける。
そして暫く真剣に考えていると、あるキーワードが浮かんだ。
けれどもあまりにも熟考しすぎた為、海斗がハッと我に帰った時にはすっかり泣き止んだ結衣菜さんが仏頂面で待っていた。
「か〜い〜と〜さ〜ん。いま結衣菜の事、忘れてたでしょ!」
「ん?うん。色々と考えてた」
「ヒドイよ〜!結衣菜めっちゃ悩んでんだから!営業中もずっと怖かったんだからね!」
ソファをバンバンと叩き、頬を膨らませてかわいく睨む。
しかしそこには先程までの険悪な空気は無く、月一で会っていた頃のような空気感に戻りつつあった。
