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闇夜に輝く

第50章 パトロン



そういう好循環の中での働きは運も引き寄せる。

結衣菜さんに太客の指名が付いたのだ。
毎週のように派手にお金を使うその客は山口様という、不動産管理会社の社長。
風貌は少し怪しい感じだが、支払いは毎回ゴールドのクレジットカード払い。
社会的信用がないとそんなカードは持てない為、海斗もそんなに心配はしていなかった。

そうして6月も月末に差しかかろうとした時、結衣菜さんから相談があった。

「結衣菜ね、一人暮らしする事にしたの」

「そうなんだ。まぁ、毎日帰りが遅いから実家だと色々あるよね」

「うん。ママの新しい彼がちょくちょく家に来るからさぁ。居づらいんだよね」

「そ、そっかぁ。結衣菜ってお父さんいなかったもんね。まぁ子供としては複雑か」

いきなりデリケートな話をブッ込む結衣菜さん。
けれどそんな結衣菜さんとのミーティングもだいぶ慣れてきた海斗は冷静に話を聞く。

けれど結衣菜さんはさらに爆弾を投げてくる。

「ん〜、別にママに彼氏が出来るのはしょっちゅうだからいいんだけど、今度のママの彼氏ってね、結衣菜が高校生だった時の担任なんだよねー」

「はぁっ?結衣菜の担任だった先生が?そりゃぁ気まずいねぇ」

「でしょー?そしたら私のお客さんで山口さんっているでしょ?その山口さんが管理してるマンションの一室が空いてるから好きに使っていいよって言ってくれたんだよね」

あっけらかんと話している結衣菜さんをよそに、ツッコミどころが多すぎて一瞬頭をおさえる海斗。

「…そうかぁ。まあ、それってどういう意味かわかってるんだよね?愛人契約なんかして大丈夫なの?一応ウチの店の寮もあるよ」

「やっぱりそうだよねー。でも家賃要らないって言ってるし。お店の寮って意外と高いじゃん。それに結衣菜の事をこれからも応援するって山口さんが言ってくれてるから……」

海斗は『愛人』というワードをあえて出した。それは非難をしているわけではない。
その意味を理解しているか確認をしておきたかった。
けれど結衣菜さんはハッキリと認識している答えだった。


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