闇夜に輝く
第50章 パトロン
海斗はじっと結衣菜さんを見つめる。
そこにはいつの間にか、女としての価値を認識し、この業界で生きていく覚悟を決めた夜の蝶がいた。
結衣菜さんは色恋営業が苦手。
だけど色恋営業が出来なければトップレベルのキャストには絶対になれない。
結衣菜さんの場合、客と疑似恋愛の駆け引きが出来ないのであれば一層の事、割り切った愛人関係の方が上手くいくのかもしれない。
テレビでは愛人や不倫を批難している場面をよく見るが、一般的な倫理観なんてここでは幻想でしかない。
なぜなら客の中には妻子持ちの教師、医師、弁護士、都議などたくさんいる。
『センセイ』と呼ばれ、尊敬される立場にある人々が、だらしない顔で自分の娘と同年代のキャバ嬢を口説いているのだ。
昼は綺麗事を並べ、夜は欲望を剥き出しにする。
そんな世界で倫理を説いても意味がない。
今まで海斗は結衣菜さんをどこか妹の様に思っていた。
だけど高校生の結衣菜さんはもういない。
すでに女の武器を最大限に使って稼ごうとする結衣菜というキャバ嬢になったのだ。